君のための嘘
私が雪見酒をしたいって言わなかったら……。


あの時、ラルフは温泉に入っている私を見て立ち去ろうとしていた。


私が抱いてって言わなかったら、ラルフは止めていた……。


すべて私の意思で起こった事。


男は愛していなくても、女を抱ける。


分かっている、分かっているけれど……ラルフだから許せた。


そっと目を開けると、ラルフの寝顔がダウンライトの灯りで見える。


ラルフを見るたびに胸の高鳴りや、苦しさはどんどん増してくる。


最初に出会った頃よりも、より激しく。


私はこの人を嫌いになれない。


だから、愛されなくてもいい。


このまま一緒に居てくれるだけで幸せと思おう。


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