君のための嘘
「おばあ様、どうしましたか? 今は忙しいんです」


ラルフは歩き、視線を彷徨わせながら、携帯電話を耳にあてた。


『ラルフ、なんと言う事をしたのですか? いったい誰と結婚したのですか!』


悲痛な祖母の声にラルフの脚が止まった。


「知ってしまったんですね?」


『ええ! いますぐ説明をしなさい。こちらへ来てですよ?』


「今は無理です」


『貴方はわたくしを入院させたいのですか? 驚くことを聞かされ、血圧が上がってしまったと言うのに! すぐにいらっしゃい!』


通話がブツッと切れた。


こんなに早く祖母に見つかる予定ではなかった。


夏帆ちゃん……今頃君は……何をしている?


どこにいるんだ?


家出をさせるまで追い込んでしまった事を後悔していた。


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