君のための嘘
今の夏帆の頭は血が上っていると言っていいだろう。


ラルフに文句を言わずにはいられない。


もう私の事には口出さないで。


霧生の名が無くてもひとりで生きていける。


******


マンションに戻ったが、ラルフは出勤してしまっていた。


夏帆は以前霧生ホールディングスを調べ、書き込んでいた手帳を開いた。


カバンを盗まれて、お金だけ抜かれていたなんて信じていたなんて、なんてバカだったんだろう。


パスポートや手帳も取られるはずなのに。


世間に疎い自分に呆れながら、会社の所在地を書いたページを探す。


「あった……」


コンシェルジェにタクシーを呼んでもらって行けば、ここに着くはず。


夏帆は手帳を片手に部屋を出た。


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