君のための嘘
「夏帆ちゃん!待って!」


ラルフは何か勘違いしている夏帆を追おうとした。


だが、胸に刺さる様な痛みを覚えて立ち止まる。


「っ……」


胸を押さえながら、ふらふらと執務机に近づく。


あまりの痛みに意識を闇に持って行かれそうだった。


その時、ドアが開いた。


「ラルフ!おい、大丈夫かっ!」


入って来たのは侑弥だった。



「く……すり……を……」


絞り出すような声に、侑弥は慌ててラルフの執務机の引き出しから薬の瓶を取り出した。


床に倒れ、顔を苦痛に歪めたラルフの口に侑弥は薬を含ませた。



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