君のための嘘
「……大丈夫……だから……向こうに行って……」


苦しむ姿を夏帆に見せたくなかった。


まだ……大丈夫だ……これくらいの痛みでは止まらない……。





夏帆はドアを叩く手を宙で止めた。


ラルフ……私に苦しむ姿を見せたくないんだ……。


神様、お願いです 痛みをすぐに取って……!



そうだ!着替えなきゃ!


万が一、何かあったらと私服に身繕い、再びバスルームに行こうとした時、ドアが開いた。


深緑色のバスローブを身に着けたラルフは、うっすらと目の下にくまがあるものの何でもないような顔をしていた。


それどころか、夏帆が私服に着替えているのを見て目を大きくした。


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