君のための嘘
「……もう……心配したんだから……」


大粒の涙をぽろぽろ流す夏帆を見て、痛みが治まったはずの心臓に鈍痛を覚えた。


「ごめん もう大丈夫だから 心配をかけてごめん 軽い発作だから」


ふたりはベッドに腰を掛ける。


「お願い、どんな姿でもいいから見えるところにいて」


夏帆はラルフの両手を取り、口元に近づける。


「夏帆ちゃん……」


「だって!バスルームにカギ掛けられてっ、何かあったらどうするのっ?私、後悔してもしきれない!」


「驚かせてごめん……」


泣きじゃくる夏帆にラルフは謝るばかりだった。



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