君のための嘘
「ええ、わかります 夏帆ちゃん まあ、こんなに綺麗になって」


すぐにわかってくれた嬉しさで、夏帆は自分より小さな体に抱きついた。


「会いたかったのよ でもいつか来てくれる。そんな気がしていました」


院長は皺のある顔をくしゃっとさせる。


使い込まれたソファに座ると、夏帆と院長は近況報告を話し始めた。


もちろん、ラルフのことも紹介し、所々会話に加わってくれる。


「そうだわ!夏帆ちゃんに渡したいものがあったの ちょっと待っててね」


院長は部屋の奥のドアを開けて入ると、すぐに戻って来た。


その手には箱根で買った寄木細工の箱に似たものを持っている。


「先生……それ……」


箱を見つめる夏帆の目が大きくなる。


「ええ、失くしてしまった夏帆ちゃんの大事な箱よ 大掃除をした時に出て来て、渡さなければと思っていたの」


寄木細工の箱を受け取ると、懐かしさから目頭が熱くなり箱を胸に涙が溢れだす。


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