君のための嘘
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ラルフの渡米の日が4月15日に決まった。


ふたりは渡米の準備に追われる中、仕事の引き継ぎもあり、毎日忙しく過ごした。


そして、4月の始め、祖父は永眠した。


夏帆は何度か祖父の病室を訪れたが、うつろな状態が続き、話すことが出来なかった。


すでにラルフや妻の存在もわからなくなり、静かに息を引き取ったのだ。


祖父が亡くなった事で、ラルフは更に死を意識した。


死は怖くないが、残していく夏帆が心配でならない。



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「これでよしっ」


スーツケースを閉じて、夏帆はふぅとため息を吐いた。


渡米は明日。


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