君のための嘘
「海外へお出かけだったんですか?」


スーツケースを持っていたのでそうなのだろうけれど。


あの場にいてくれて、こんな私の面倒を見てくれ、私はラッキーだったなと思う。


「ええ、ロスに仕事で」


「じゃあ、同じ飛行機だったかも……」


「そうですね、夏帆さんはなぜ日本へ?様子を見ていると、観光って感じではありませんね?」


何も考えていなかった夏帆は、ラルフの言葉にグラスを落としそうになった。


「ぇ……っと、」


当たっている……だけど、なんて答えて良いのか、考えが浮かばない……。


「言えない理由があるんですね?」


「言えなくはないんですけど……」


「言わなくていいですよ 事情があるのですから」


あ……あの人たちから逃げていたのを知っているんだっけ……。



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