君のための嘘
「……実は……結婚相手に会いに来たんです だけど、どうしても嫌で……迎えのあの人たちから逃げたらこんな目に合ってしまったんです」


「……そう、夏帆さんは結婚したくないのですか?」


ラルフは両手を組み、頬杖を付いて夏帆を見ている。


「いつかはしたいけど、全く知らない人と結婚なんて出来ないと思ったんです だけど、パパの会社が彼の会社に吸収されるから、地位を守るためにこの話が……」


パパを思い出しちゃった。


もう逃げたって知られちゃったかな……きっと怒っているだろうし、悲しむよね……。


「……結婚しなければ、お父さんは困ったことになるんじゃないの?」


「……」


そう言われてしまうと、やっぱり今からでも結婚相手に会わなくちゃいけない気分になってきた。


弾かれた様にイスから立ち上がる夏帆をラルフは驚いて見ている。


< 51 / 521 >

この作品をシェア

pagetop