君のための嘘
「余計なことは考えないで眠るんだ 明日、考えよう」


実際、全身が重りでも付いたみたいに重くて、このまま眠ってしまいそうだった。


「寝る時はコンタクトレンズを外すんだよ」


部屋の前でラルフはそう言って、コンタクトレンズをはめていることを夏帆に思い出させた。


「はい ……あの、何から何までありがとうございました」


「どういたしまして」


ラルフはにっこり笑うと出て行った。


******


本当にラルフさんって紳士だと思う。


会ったばかりの人をこれだけ信用するのはどうかと思われるかもしれないけれど、彼に対して不安になる材料が見当たらない。


容姿端麗で、優しくて、セレブな彼の恋人はどんな人なんだろう。


いやだ、何を考えているの?ラルフさんの恋人が気になるなんてっ。


部屋の隣にあるシャワーでさっぱりし、コンタクトレンズを外した夏帆はベッドに入り今日を振り返っていた。


ぼんやりとかすんでいく意識の中で、美しいラルフの顔が鮮明に映った。



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