君のための嘘
「何を言っているんだ、とにかく座って 紅茶を淹れてくるよ」


ラルフは夏帆をソファーに座らせると、キッチンに向かった。


イギリスの最高級の茶葉で淹れた紅茶。夏帆にはミルクティーに砂糖をひとつ。自分用にはストレートにして、リビングに戻った。


夏帆は身じろぎもせずに、コートを抱えたまま座っていた。


「熱いからゆっくり飲んで」


目の前に置かれたカップからは白い湯気がたっている。


「ラルフさんの優しさなのに、酷い事言ってごめんなさい……」


「ラルフって呼んでくれないかい?さんを付けられると年が離れているように思えてきたよ」


ラルフは笑みを浮かべて見せる。


「夏帆ちゃんは21?22?」


「22歳です……」


年の話になって、戸惑う夏帆だ。


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