君のための嘘
「僕は25歳なんだ 夏帆ちゃんと3つしか違わないね だから敬語は使わないで普通に話さないかい?」


「ラルフさんがそれでいいと言うなら……」


「ラルフだよ 夏帆ちゃん 呼び捨てで言われる方が慣れているんだ」


「でも、私には夏帆ちゃんって……」


「僕は呼び捨てにするより、夏帆ちゃんの方が呼びやすいんだ」


「……じゃあ、夏帆……ちゃんで……」


どうせ、ここを出て行くつもりだ。


仕事をしてお金が入ったら返すまでの付き合いになる。


「出て行くなんて言わないでくれないか?」


「えっ!?」


「夏帆ちゃん、日本は不慣れだろう?お金を貸したとしても、心配で仕方がないよ」


「そんな子供じゃ……ないです……」


成人しているのだから、そんな心配は無用だと思いながらも、初めての東京、ひとりで暮らすのは心細いと感じていた。


< 78 / 521 >

この作品をシェア

pagetop