君のための嘘
残された美由紀は夫が角に消えると、つつっとラルフに近づき耳元に唇を寄せた。


それを見た夏帆の目が大きく見開いた。


そして視線をフッと下に逸らす。


見てはいけないものを見てしまったみたいな気分だ。


「妬けちゃうわ 近いうちに埋め合わせしてね?」


そう言うと、ラルフから離れて微笑んでみせる。


モデルをしていたのだから、もちろん彼女は群を抜いて美しい。


微笑まれれば、男性はくらーっとなるだろう。


仲が良さそうなふたりを見たくないけれど、視線を戻してしまうのは嫉妬しているせいなのだろうか。


「もちろん、この埋め合わせは必ずするよ」


ラルフはそんな事を言っていた。


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