マリア

 ある日、徳二郎が昼寝をしていると、不思議な夢を見た。目映い光の中、裸のマリアがそっと自分を抱き、まるで赤子のように包み込む。温かいぬくもりに微睡みながら、少しずつマリアに自分の体が溶けていくのだ。やがて意識は薄れ、水…いや、血液になってマリアの体をかけ巡る。ついには自分の意志はなく、マリアに同化してひとつとなった。そしてマリアがこの世でもっとも美しい声で囁く。「とくじろう」と。
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