マリア
「カイト、そんなに急がないで」
 カイトと呼ばれた天使は、母とは違う人影の方へパタパタと走り寄り、袖口をくいと引っ張った。
「ねえ、原田もむかしここにいたんでしょ?」
 原田は袖を引っ張る手を取り、カイトを抱き上げた。
「ああ。お前達のお父さんとはここで逢ったんだ。さ、もうすぐだよ」
 するともう一人の天使が近寄ってきた。
「カイト、降りなさいよ。いっつも楽ばっかするんだから」するとカイトはべーっと舌を出し、「うっさいな、ミトのおばさん!!」と憎まれ口をきいた。クスクスとマリアが笑っていると、ミトは「ばっかみたい。カイトって子供!もう遊ばないから」
 そんなミトを後ろから原田が抱き上げた。「ほら、こうすればいいだろ?」ミトは照れくさそうにしたが、少し甘えるように肩に寄りかかった。
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