【十の瞳】
 



八野真綾――中年の女性。


かっしりとしたスーツの女性で、いつも不機嫌そうにしていた、あの女性か……。


今の悲鳴も彼女のものだったのだろうか。
 

十二愛は、なかなか放そうとしてくれないコロを無理やり剥がして、ふらふらと廊下に出た。
 


コロは、そんな彼女に驚きつつも、十二愛を追うように出てきた。
 

踊り場の向こう、急な階段の一番下に、関節をあちこち奇妙な方向に向けて、倒れている女がいた。
 

血だまりに顔を浸している。


――首は完全に折れてしまっているようだった。
 

まだ手足がわずかに痙攣していたが、彼女がもうこれ以上生きられないことは明白だった。


八野の喉元には、鈍色に光る包丁が深々と突き刺さっていたのだった。



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