【十の瞳】
「……何の騒ぎ?」
ふと、蝶子が大欠伸をしながら、スリッパの音をぺたぺた響かせ、ホールに繋がる階段を下りてきた。
上下、雑巾みたいな色のスウェット姿で、壮大な寝癖がついている。
「あ、おはようございます。
なんか、大変なことになっちゃったみたいですよ」
「むっ、君……誰?
昨日、いたっけ?」
「えっと、……コロです。
昨日もちゃんといましたよ」
「何か違うような……」
「今は、眼鏡ですから」
「あ、なるほど」
マスターを出せと喚き始めた八野を、藤浦さんとえどがぁさんが一緒になって、まあまあ、となだめていた。
そんな光景を眺めながら、蝶子に土砂崩れや電話の不調の事を告げると、
彼女は興味無さそうに、「ふぅん」と呟いただけだった。
「……私で最後?」