【十の瞳】
「あ、一人足りない」
「え?」
呆けていた蝶子が、ぽんと手を叩いた。
「ほら、あの人がいないのよ。
無精ヒゲの、自称二十代」
「あ、そういえば……」
うっかりしていた。
「寝坊ですかね?
……昨日、大分酔っぱらってたみたいだから」
「かもね。まったく、いい大人がだらしない……」
最後から二番目に起きてきた人だって、充分にだらしないと思うが、そこは指摘しない事にする。
少なくとも、最後から三番目に起きた僕には、言えない。
「――実は、今朝から、旦那様から返事が無いのです……」
観念したような藤浦さんの言葉に、急にホールが静まり返った。
「え……それって……」
一同に、不穏な空気が広がる。