【十の瞳】
運悪く、誰よりもクローゼットに近い場所に立っていた、えどがぁさんが振り向くと、
皆、縋る様な眼で彼を見た。
どうぞ、あなたが……。
そう言わんばかりに。
意を決したように、彼は取っ手に手をかけ、思い切り手前に引いた。
中には、モニターで見たようなマスターの貴族服が何着か、ぶら下がっていた。
クローゼットの大きさの割に、意外と数は少ない。
えどがぁさんが、うぐっと口元を押さえて、クローゼットから離れた。
クローゼットの底の方に、ひときわ強い腐臭を放つ、人の胴体があった。
血だまりの中に横たえてある。
首も、手足も無い。
いずれも、付け根の辺りで切り取られていた。
これは、目をそむけたくなる様な、本物の死体だった。
「この服……平三郎さんだ……」
僕が言うと、ようやくその場の全員が、事態を把握した。