【十の瞳】
しかし、彼はせっかくのアイデアを無下にされたと感じたらしく、
言葉を重ねる度にどんどんムキになっていき、終いには、
「行ってみなきゃ分かんねーだろーが!
てめーなんか信用できねえよ!」
と、傘も差さずに屋敷を飛び出してしまった。
急いで追いかける。
藤浦さんが傘を勧めてくれたが、この暴風雨では意味が無いだろうと思い、短く断った。
洋館は、村を見下ろすように切りだった崖の上にある。
ここに繋がる道は一本しかなく、今はそこが土砂で埋まってしまっているのだという。
眼鏡を水滴から守るように――あまり効果は無かったが――手をかざしながら走ると、
思ったよりも早くファニーペインに追い付いた。
彼も、無鉄砲な行動の割には、慎重に走っているようだった。