【十の瞳】
『ようこそ、探偵諸君……』
食堂と思しきホールで、モニターの中の男が言った。
『どうもはじめまして。私は、【紡ぎ車】の管理人だ。
これといって名前は特に決めていないが、【マスター】とでも呼んで頂きたい』
やや横柄な喋り方をするその男は、長髪を後ろで括っていて、濃い色のサングラスをかけている。
顔がよく分からない。
とにかく、白いという事しか。
お化粧でもしているのだろうか?
ただ、彼の落ち着いた雰囲気から、何となく三十代から四十代くらいの年齢だろうと推測してみる。
更に彼は、まるで中性貴族か何かのような、豪奢な服を纏っていた。
赤い生地に派手な金糸の刺繍。
つい、ベルサイユのばらを連想した。
あんな扮装、TVでしか見たことが無い。
この映像が録画されたものなのか、あるいはどこかの部屋から中継されているのか、よく分からない。
けど、そんな事どうでもよくなるくらい、僕は興奮していた。