リアル




「リアルサイト、てところです」


川原はぼそりと言った。


薫は何故川原が教えてくれたのか疑問に思いながらも口を開いた。


「初めて聞く名前ね」


それどころか、薫はブログを投稿出来るサイトなど何一つ知らない。


「リアルサイト」が聞き慣れないサイトだというのは隆の受け売りだ。


隆は他人や周りに興味はないが、その若さと常に様々な情報を仕入れている為、そういったことにも詳しい。


「……個人がやってるサイトですから」


川原はそれだけ言うと事務所を出ていった。


薫はそこで彼女のハンドルネームを聞くことを忘れたことに気付いた。


いや、もっと早く気付いていたとしても、それを訊く術はない。


そんなことを訊いたら、薫が「リアルサイト」の詳細を知っていることになってしまう。


薫は諦めて、取り敢えず自分の携帯電話に「リアルサイト」の画面を映し出した。


そして川原のタイムカードを目をやる。


川原の下の名前は真理子だ。


「リアルサイト」の中にはマリ、マリ子、という名前がある。


どちらかが川原かもしれないし、どちらも違うかもしれない。



.
< 126 / 265 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop