リアル
あの背が、あと一分目の前にあったなら、確実に引き金を引いていただろう。
そして、あの男をこの手で殺していた。
そうならなかったのが結果としてよかったのかは、未だに判断出来ずにいる。
殺してしまっていたら、更なる後悔に苛まれていたのか、それとも満足感に満ちていたのか。
この黒々とした鬱憤のような、憤りのない想いは少しは軽減されたのか。
薫は手を銃を構える形にした。
あと一分目の前にあったなら、本当に引き金を引いていたのだろか。
本当は殺す時間は十分にあったが、躊躇っただけではないのだろうか。
妹の仇と分かっていて、自分が殺人を犯すことが怖くなったのではないだろうか。
「あのさ……」
隆の声に薫は我に返った。
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