リアル


薫が美緒を連れていったのはこ洒落たイタリアンレストランだった。


ウェイターに席まで案内されている時、薫は美緒に「昔からのお気に入りなの」と語っていた。


隆にとってそれは初耳であり、何故かそれが無性に引っ掛かった。


勿論、嘘の可能性だって十分にある。


事前に下調べしたのかもしれない。


だとしても、誰と。


隆の思考はどうしてもそこに向かってしまう。


生野には他に恋人がいる。


なら、自分が全く知らない誰かなのだろうか。


そう思えてならないのだ。


この事件か解決し、そして結果として両親殺しと無関係であった場合、自分は今の環境を間違えなく変えるだろう。


生野はああ言ってくれたし、勿論それは嬉しかった。


だが、やはり迷惑をかけるわけにはいかない。


そして何よりも、邪魔をされたくないのだ。




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