リアル





「あのですね、被害者三人の被服から、微かに毛布の繊維が発見されてるんです。しかも、全て同じものです」


若月は自信満々といった表情を浮かべて答えた。


何処が新発見だ。


「何処が新発見だ」


生野が煙草を口から外そうとした瞬間、脳裏に浮かんだのと同じ言葉が耳に届いた。


低めの女性の声がした。


少し乱暴なその口調は生野が苦手とするものだ。


「和泉本部長っ」


若月が焦りを完全に隠せていない口調でその名を呼んだ。


和泉寿々子。


今回の捜査本部の指揮を務める女性だ。


生野と同い年ながら、彼より更なるエリートである彼女は生野より上の立場に立っていた。


そして、生野は誰よりもこの寿々子が苦手なのだ。



.
< 168 / 265 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop