リアル
「あのですね、被害者三人の被服から、微かに毛布の繊維が発見されてるんです。しかも、全て同じものです」
若月は自信満々といった表情を浮かべて答えた。
何処が新発見だ。
「何処が新発見だ」
生野が煙草を口から外そうとした瞬間、脳裏に浮かんだのと同じ言葉が耳に届いた。
低めの女性の声がした。
少し乱暴なその口調は生野が苦手とするものだ。
「和泉本部長っ」
若月が焦りを完全に隠せていない口調でその名を呼んだ。
和泉寿々子。
今回の捜査本部の指揮を務める女性だ。
生野と同い年ながら、彼より更なるエリートである彼女は生野より上の立場に立っていた。
そして、生野は誰よりもこの寿々子が苦手なのだ。
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