リアル
「被服に毛布の繊維が付着している。どういった経緯でそうなった?」
寿々子はくびれた腰に手を当てながら若月に質問した。
女性にしては背の高い寿々子は十センチのヒールのある靴を履いている為、小柄な若月より目線が上だ。
「は……はい。えと……そのですね」
咄嗟のことで言葉に詰まっているのか、それとも本当に分からないのか。
若月は視線を泳がせながら同じことを繰り返した。
「もういい。生野、貴様は何か思い付くか?」
寿々子は生野にくい、と視線を動かした。
何故、立場が上というだけで同期の、しかも女に貴様呼ばわりされなくてはならないのか。
生野は腹の中で舌打ちをした。
だが、それが組織というものの定石で、逆らうことなど許されないのだ。
それを理解していなければ、この捜査本部に身を置くことも出来ないし、警察という組織の中でやっていくことも出来ない。
なので、生野は寿々子に向かって姿勢を正してから質問に答えた。
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