リアル




「被害者の衣服に毛布の繊維が付着した。可能性としては、被害者の遺体を運ぶ時に毛布にくるんだ、というのが一番高いとは思われます。あと考えられるのは、殺害後、後始末の間、遺体に掛けていた、などかと」


生野の答えに、寿々子は眉をぴくりと動かした。


「何故、後始末の間に遺体に毛布を掛けたと思う?」


「被害者はどれも目を開けた状態でした。殺した相手の視線を嫌う殺人犯は少なくないかと」


寿々子はふ、と唇の端を持ち上げた。


それはお見事、と言いたいものではなく、嫌味に満ちたものだ。


「これは私の見解だが、犯人は殺しを楽しんでいる。そんな者が被害者の視線を嫌うか?」


寿々子の嫌味たっぷりの発言に生野は下唇を噛んだ。


そんなことは分かりきっている。


あくまでの話をしたまでだ。


いや、捜査にそんなことは必要ない。


確かに、一見何の関わりもないような推測から閃きを得ることもある。


だが、今のはただの見当違いの発言でしかない。



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