リアル




治療が怖いのか、母親に抱えられながらも手足をばたばたと動かしてもがいている。


大粒の涙を頬に伝わらせ、ぎゃんぎゃんと泣きわめく姿を、その場にいる誰もが注目していた。


母親はそれに恥ずかしさと焦りを感じているのか必死に子供を宥めようとしている。


だが強く怒るわけではなく、何とか恐怖を軽減させようとしているのだ。


「大変ですね」


薫はその様子を微笑ましくみながら言った。


妹の美咲もよくこうして泣き叫び、自分と母親で宥めたものだ。


懐かしい記憶は温かくもあり、冷たくもある。


「あの子、虫歯が凄く進行していて、今日こそ治療しないといけないんですよ」


美緒は困ったような表情をした。



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