リアル
エピローグ





薫は隆に弁当を与えた。


生野の手料理で舌の肥えた隆は微妙な表情を作った。


「嫌なら食べなくていいわ」


薫が弁当を下げようとすると、ごめんなさい、と言って隆は弁当を奪った。


薫は隆は事件が解決したらてっきり姿を眩ますものだと思い込んでいた。


だが、実際はこうして飯をねだりにきている始末だ。


ほっとしたような、困ったような。


薫は隆に見えない位置で溜め息をついた。


そうだ、生野に連絡をして、事件解決を手伝った労いとして何かご馳走させよう。


薫はそう思いながらカーテンを開けた。


隆がここを去らない理由は両親を殺した男が近くにいるから、それなのだろう。


そして、美咲を死に追いやった者も未だ見付かっていない。


まだ人生は長い。


その中で必ずや見付け出してみせる。


薫は強く心に誓った。



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