リアル



『殺害されたのは、坂口佳奈さん二十一歳で、都内の派遣会社に登録。死亡推定時刻は二十二日の午後11時から、二十三日午前一時の間と見られ……』


真瀬隆はそこでテレビを消した。


全て新聞に書いてあったことで、特に目新しい情報はなさそうだ。


一ヶ月前に起きた殺人事件と似ている。


それが、隆が抱いた今回の事件に関する感想だった。


若い女性が被害者。


そこは特別注目する点ではない。


隆が注目しているのは、『殺し方』だ。


それと、何故殺したのか。


これが怨恨に因るものであるなら、そこに隆の興味の対象はない。


愉快犯や猟奇殺人。


殺人事件が起きる度に隆が重点を置くのはそこなのだ。


誤って殺してしまったり、痴情の縺れが殺人に発展した。


そんな事件には微塵も興味はない。


普段日本にはそんな事件がごまんとある。


だが、今回の事件はそれとは違う。


隆は確信めいたものを抱いていた。



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