∮ファースト・ラブ∮
「麻生先輩から話があるって言われたの。
行ってみたら……先輩、女の人と抱き合ってた……」
あいちゃんは、じっと話が続くのを待っていた。
グラウンドの騒がしい声が、今のあたしたちには遠くに聞こえた。
「最初は面白半分で付き合ってくれたみたい。
でも、やっぱりおしとやかな人が好きなんだってさ……」
あたしじゃ無理だった。
側にさえもいさせてくれなかった。
今の女タラシになった原因をつくった、香織さんじゃなきゃ、麻生先輩の心は満たされないみたい。
それが……よく、わかった。
ブランコをゆっくりこいでいた足が止まって、うつむくと、同じようにこいでいた、あいちゃんの足も止まった。
「ふ~ん。
でも……変だよね」
悲しい気持ちのあたしなのに、あいちゃんは何かを考えるようにして、そう言った。
へん?
何が?
涙のたまった目をあいちゃんに向ければ、あいちゃんは眉を寄せていた。
「あんたがそうやって無理して笑い出した頃からかな?
麻生先輩の女遊び? っていうの?
あれ……前よりひどくなってるみたいよ?」
「? それとこれと、どういう関係があるの?」
今度はあいちゃんに訊いた。
「さあ? あんたが直に確かめてみたら?」
どうして?
どうして、あいちゃんは、そんなことを言うの?
もう無理なのに……麻生先輩の側にいることさえ、許されなくなったのに…………。