光の先に…
「疲れた…」
チチーーッ!
「ん?何の音?」
「っ!?音じゃない!キメラよっ」
「…えっ?!」
奇声がした方を振り向くと、草むらからガサリとキメラが姿を現した。
頭は鼠で体はイルカ、手足が蜥蜴だ。
「な、何あれ…」
思わず出た言葉。
キメラが明希を睨む。
「…!?明希っ!」
レクシスが叫んだ瞬間、キメラは明希目掛けて突っ込んできた。
「うあっ!」
突進してきたそれを、なんとかそれを避ける。
また襲ってきそうなキメラに、レクシスは手を翳した。
「な、何をするのっ?!」
「魔法でなんとか止めてみる。でも、しばらくの間体を動かなくさせるだけだから時間稼ぎにしかならないけど…」
レクシスの手に光が集まり始める。
キメラは逃げようと体を後退させた。
充分な光を集め、レクシスは大きく息を吸う。
「“ロッソネ―ヴェ”!」
…ピキッ!!
一瞬の出来事だった。
キメラの動きが完全に静止し、ピクリともしない。
「す…すごい」
明希はキメラに近づき、その体に触れる。
体温はある。本当に動かなくさせただけのようだ。
「明希、早くここから離れよ。キメラが動き出しちゃう」
「そ、そうだね」
明希は動かなくなったキメラを一度見て、その場を離れた。
キメラなんて初めてだ。
あんなのが自分の世界にいる訳ない…
やはり、ここは異世界なんだと改めて思った。
なんだか悲しくなってきた。