3つのナイトメアー
華代が地の底を這うような低い声で顎をしゃくった。二人は店を出てしばら
く歩いた。
やがて立ち停まった華代は、堰を切ったように恭子をののしり始めた。
「圭じゃなくて残念だったわね。今朝、私が久しぶりに東京に戻ってきたとい
うのに、圭が私から目を反らせて避けるの。明らかに様子が変だから、携帯を
取り上げたら、あんたからの愛のメッセージが一杯入ってるじゃないの。どう
いうことかと問い詰めたら、これまでの経緯の全てを白状したわ。圭は今一
人、私が借りてるアパートにいるわ。あの子は幼い頃から、私のいうことはな
んだって聞くのよ。結局、あんたより母親の私を選んだのね」
恭子は必死になって弁解しようとした。
「華ちゃん、どうか落ちついて。私の話を聞いてちょうだい」
「ふん、あんたの言うことなんか誰が信じるもんか! よりによって、いとこ
である私の息子を誘惑したりして、なんて汚らわしい。あんたは子供の頃から
嫌なやつだった。散々、田舎者だといって私達を見下してきた。あんたなん
か、たまたま都会の物分かりのいい親の元に生まれただけじゃないの。自分で
稼いだこともないくせにさ。ほとんど努力もせず、欲しい物を次々手に入れて
いくあんたを見て、私がどれだけ悔しかったか分かる? 私があんたに優しく
したのはね、あんたのパパの貴之伯父さんに頼まれたから、仕方なしだったの
よ。あんたは大嫌いだけど、パパの方は大好きだったんですもの」
「私、あなたのこと、馬鹿になんかしてなかったわ。だって、私達あんなに仲
が良かったじゃないの」
「いいえ、田舎の子は不潔でみすぼらしく常識知らずって、顔に書いてあっ
た。あんた、ずっと昔、夜中にのこのこと一人で祠に行って、不良どもに襲わ
れかけたことがあるわね?あれは全部私がしくんだの。あの日の昼間にあんた
が言ったことが、どうしても許せなくて。