シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
親の愛情に薄い僕は、その成長度合いを緋狭さんに尋ねたくなる。


おかしいよね、闘っているというのに。

今、僕は必死だというのに。


それでもこうして相対しているのが楽しいなんて、さ。


僕も"男"ということか。


強い者に惹かれ、自分の力が何処まで通用するか試してみたくなっているということか。


思い出す――

僕が次期当主の頃。


緋狭さん、よく貴方と組み手をしましたよね。


あの頃の僕は――

貴方に指1つ触れられなくて、

貴方にただ避けられていたばかりでした。


今――

貴方に足を使わせている僕は、

あの時よりも強くなっていますか?


大切な者を守るに相応しい…成長を遂げてますか?



――玲、諦めるな。



貴方に鍛えられてきた僕は、

今――

櫂の役に立ててますか?




しかし――


緋狭さんの片手は、櫂に向けられていて。


緋狭さんは、僕の攻撃を足だけで受け流しながら、身体を斜めに傾けて、片手で駆け抜けようとしている櫂を制していたんだ。


余裕。

僕と櫂を相手に出来る、そこまでの余裕がある。


皇城翠は――知らぬ間に、地面に転がり反応がない。


いつの間に!!?


僕と櫂達との間には距離があるというのに、双方の相手が出来るということは、それだけの驚異的速度で、自在に空間を動けるということ。


いまだ彼女の出現を、気配では無く投げられた声音でしか掴めぬ僕達にとって、彼女の移動速度は瞬間移動としか思えない。


更にその卓越した格闘センス。


櫂のあがいたような猛攻撃も、緋狭さんの腕は易々と吸収する。


風の力も闇の力も…使う前に緋狭さんが動く。


赤い外套を翻しながら、その動きは常に必然。


常に僕達の先を読み動いている。


故に余裕。


最小限の動きにて、僕達の最大限の力が制される。


此処まで――

此処までなのか、緋狭さんとの力の差は!!!

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