シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
小猿くんの力は、久涅には有効であったみたいで、激しい舌打ちの声が聞こえた。


しかし絶対的効力を持っていたわけではなく、あんな水量の力を…久涅は両手を突き出して静止させていて。

久涅を押すか押されるか…そんな緊迫した景色の端で、櫂が立って居た。


駆け抜ける直前。


櫂は――

あたしが手首に巻いた赤い布を口に含んだ。


それはやけに切なげで、同時に酷く艶めいて。


あたしがいつも櫂と共に在ると…

それはあたしの代わりだと…

十分判っているはずの櫂がしたその行為は。


まるであたし自身になされたように思えて、身体が熱くなった。

全身の血が、どくどくと煮え滾る気がした。


恥ずかしいのと、恍惚感と。


身体だけではなく…心も震えたんだ。


同時に…妙な胸騒ぎがしたんだ。


だって…

櫂の手首にあたしの分身がいるのに…

櫂の傍にあたしがいるというのに…


あまりに櫂は孤独に見えたから。


どうして?


そう思ったら。


布を口に含んだ行為は…櫂の覚悟のような、誓いのような…そんな気がしたんだ。


無性に…喉が渇いてきて。

氷皇の馬鹿げた戯れ言ばかりが頭にぐるぐる回ってきて。


櫂が口に布を含んだまま、あたしを見た。



その目は…いつものような穏やかなものではなく、いつにない強さを秘めており、ぎらぎらとした印象を受けた。

それがふっと…弱まり。


切なげで…だけど甘やかな光を宿して。



アイシテル。



唇が…声にならない言葉を確かにそう象った時、あたしの目から自然と涙が零れ落ちた。


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