シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「君にとって…僕は"元カレ"?
それとも――…
そこまでにもなっていない?」
「玲くん?」
「ねえ芹霞。君は…
もう僕には興味失っちゃった?」
胸を締め付けられるような、哀しい顔で。
「嬉しかったんだよ?
僕と"お出かけ"しようと勉強頑張ってくれてたの…凄く…嬉しかったんだ」
あたしは玲くんの腕を掴んだまま、動くことができなくて。
硝子のように透き通る、鳶色の瞳に魅入ってしまう。
「どうして、もう…僕のことを考えてくれないの?
まだ始まってもいないのに…
終わらせないで?
僕を忘れないで?
僕にとっては…
まだ続いているんだよ?
何も…
終わっちゃいないのに」
それは…"お試し"のことを言っているのだろうか。
「ねえ僕は――
君の中では、すぐ消え去る存在なの?
君の中で、強く…長く留まっていられないの?」
それは泣いているような、掠れた声で。
「僕との"お出かけ"は…"お試し"は…
1日だけのそのチャンスさえ、僕には許されないの?」
さらりと鳶色の髪を零して、あたしの顔を覗き込む。
だからあたしは――
「玲くん…あたしと"お出かけ"してくれるの?」
そう聞いたら、玲くんは少し驚いた顔をした。
「玲くん…全然"お出かけ"を実行してくれないから、反故にされるのかと思ってた」
「そんなわけないじゃないか!! 大体君がZodiacに夢中になってたから!!」
それは怖いくらい酷く真剣で。
Zodiac。
ああ、確かに。
寝ても覚めても騒いでいたあの時なら、玲くんだって"お出かけ"の話を持ちかけられなかったろう。
理由が判れば、何だか胸のもやもやが晴れた気がした。
距離を作られてたわけではなかったのか。
「安心した~。玲くん、まだ"お出かけ"覚えてくれていたんだね。玲くんに、玲くんが日にち取り決めると宣言された以上、あたしから急かせられないし。
なかったものにされるのなら、玲くんと仲良くなる為に、別の方法を探さなきゃと思ってたんだ」
鳶色の瞳は、あたしの中の何かを走査するように揺れていて。
疑いというより、驚愕の色合いが強い。