シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
「まだ――…

楽しみに…しててくれたの?」


本当に驚いたような顔で。


「??? 勿論じゃない。だからあたし勉強頑張ったんだし。今まで以上に玲くんと仲良くなって、イロイロ知らない玲くんを知って、思い切り遊びたいんだ。ふふふ、距離感のない、素の…本当の"玲くん"を見せてね。ああ、本当楽しみだね♪」


そう嬉々として言ったら。



「え?」


玲くんが微笑んでいた。


それはそれは嬉しそうな、とても綺麗な微笑。


蕾から花開く瞬間のように、香しい匂いさえ撒き散らして。


凄く凄く…綺麗で、少しはにかんだような可愛さも入り混ぜたその笑みに、見ているあたしの許容量が超えたのか、あたしの心臓がばくばく煩く騒ぎ出した。


「どどどど、どうしたの?」


玲くんの表情はまさしく…純粋な"悦"。


あたし、玲くんをそんなに喜ばせること言ったっけ?

思い返しても、自分の願望しか述べていない。


「ねえ芹霞」


玲くんは依然微笑みながら、あたしが玲くんの左腕を掴んだままの両手のうち、左手を外して、右手の位置をずらした。


この形は――


「このままで行こう?」


まるで腕を組んでいるよう。


「え?」


それは、典型的な恋人同士のようで。


別に今、"お試し"しているわけでもないのに、どうしてこれ?


すると戸惑うあたしを見た玲くんが、くすりと笑う声が聞こえた。


「君は、"恋人繋ぎ"はいいのに、これは苦手なんだね?」


「な、慣れていないもので…」



「本当に…可愛いな」



ひええええ!?


玲くん、何事!!?


不意打ちで色気が発動されたから、あたしは慌てて横を向いて念仏を唱える。

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