シンデレラに玻璃の星冠をⅠ


俺達はただ…――

自ずと強張る顔を見合わせるだけで。


蝶が黄色い外套を着た奴に化けて、

通行料に相当する"心"を欲して、榊の眼球を喰った?

それ故かは判らないが、

13日以内に芹霞を迎えに来る?


それは幻覚だと一笑したいけれど。


がたがた震える芹霞を見れば、不安にも似た緊迫感は、ただ膨れあがるばかりで。



「ふざけるなよ」


低く…威嚇のような声を出したのは櫂。


「誰が…やるか」


漆黒の瞳は、挑むような強い光を放っている。



「想定外だな」


その声は――


榊の傍らに片膝をついていた氷皇から。


珍しく…険阻な表情をしている。


「眼窩に指を突っ込まれ、一気に抉り取られたな。何とか両目は避けたらしいが…一撃だ。身体の疵は真空状態による鎌鼬。

酷い瘴気の匂いがする」


そして僅かに目を細めた。


「蝶と黄色い外套…。

まさか――…な」


氷皇が何の可能性を思ったのかは判らないけれど。



榊は――強いんだよ。


それは間違いねえんだ。


それを超える奴がいたというのか?


桜は、灰色のテディベアを胸にぎゅっと抱きしめ、険しい顔を向けていた。


「とにかく中へ!!!」


玲の声で、俺達は家に戻った。


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