シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 

心が、壊れそう。


だけど櫂の方がもっと辛いんだ。


ああ、堂々巡りだ。


櫂を追い詰めたあたしは、櫂に何もして上げられずに、益々櫂を追い詰めて。



ねえ、あたしが櫂に応えればよかったの?


そうしたらこんな事態にならなかったの?


あたしは…確かに逃げていたから。


櫂の想い、"恋愛感情"から。


向き合おうとしなかったあたしが…きっと悪いんだ。


目の前では。


玲くんも桜ちゃんも煌も、由香ちゃんまでもが奔走して。


せめて一息つける場所をと探してきても、櫂を見るなりドアが閉められた。


泣きたくなる。


だけど本当に泣きたいのは櫂の方で。


あたしはただ唇を噛みしめ、櫂を抱きしめるしかなかった。


それしか出来なかった。


紫茉ちゃんと小猿くんは。


そんなあたし達を見て、紫茉ちゃんの住む広尾のマンションを提供してくれた。


櫂と接触することで、どんな仕打ちがあるか判らない、巻き込みたくないと…そう儚げに笑う櫂に。


何より嫌っている奴を助ける義理は何もないと、笑う櫂に。


「義理はなくても人情はある」


2人は笑った。


何かもう嬉しくて。


そういう人が欲しかったから。


「うああああん」


紫茉ちゃんがいるのに、大声で泣いてしまった。


何ていい人達なんだろう。


絶対、恩返しをしたい。
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