シンデレラに玻璃の星冠をⅠ


戦闘態勢をとった俺達の目の前で、景色が突如薄らいだ。


七瀬は何かを…落ちていた銀の袋、まあ遠坂が日頃持っていた袋だけれど、それに色々手早く詰め込んだ。


そして、呆けたままで倒れていた遠坂の両頬をぱんぱん叩いて、正気に戻させると、袋を押し付けるようにして、遠坂ごと俺達に突き出した。


「な、なんだい、一体なんだい!!?」


遠坂を受け取った芹霞の横で、俺が袋を覗き込めば…握り飯。


「こっちは気にするな、芹霞。

がんばれよ!!! あたし達は…いつだって友達の味方だ!!!

――…それから煌!!!

この前は触って本当にごめんな!!! お詫びの印に、翠の好物も入れた!!!

鳥はいないが桃太郎を元気に守れ!!!」



…桃太郎?


袋に変なの入っている。


"きびだんご"


スーパーでおなじみの、もっちりとした菓子だ。


――翠の好物。

――鳥はいないが。


おい、七瀬。


まさか猿と鳥、桃太郎って。


「俺、鬼ヶ島の鬼退治に行くわけじゃねえよ!!

つーか、ワンコじゃねえ!!!」


そう叫んだ時。


七瀬の手を掴もうとした制裁者(アリス)。


「紫茉ちゃん、危ないッッ!!!」


しかし。


七瀬の長い足が、制裁者(アリス)の顎を蹴り上げ、同時に横にいる制裁者(アリス)の脇腹に片肘を入れて。


1人、また1人と…七瀬が沈めていく。


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