シンデレラに玻璃の星冠をⅠ


「本当に仲がいいんだね、セリカちゃんとカイカイ」


イチルちゃんは羨ましそうに言った。


「うん!!! 僕ね、ちゃんと…永遠の運命の相手に、"大好き"っていう証の指輪をあげたんだよ? テレビでよくコマーシャルやっているでしょ?」


「私…テレビ見ないから…」


イチルちゃんはふるふると頭を横に振った。


「ええとね? 運命の相手には永遠を約束する、"えんげーじりんぐ"っていうのが必要なんだって。この前お祭りで、"えんげーじりんぐ"下さいっておじちゃんに言ったら、500円っていうから…僕のおこづかい全部使って、買って来ちゃったんだ」


「値段…言わなくてもいいのに…」


あたしの呟きは櫂には聞こえなかったようで、にこにこしている。


きらきら光る指輪がとっても綺麗で、とっても嬉しかった。


今は、緋狭姉から貰った大切な赤い宝石箱に入れてある。


でも、えんげーじりんぐって何だろう。


実はあたしも櫂もよく知らない。


だけど何か…特別なような気がするのは確かだった。


「それからね、僕、大好きな人に書く"らぶれたー"っていうの、芹霞ちゃんに書いたんだよ? ふふふ。僕ね、本当に本当に芹霞ちゃんが大好きなんだ!!!」


ああ、この子は。

何でこんなに可愛いんだろう。


「いいなあ。カイカイ。私もセリカちゃん大好きだから、"えんげーじりんぐ"というものと"らぶれたー"っていうもの、あげようかな」


すると櫂は、頬を膨らませて頭を横に振る。


「駄目!!! イチルちゃんは黄色が好きな時点で、好きの資格なし!!!」


「えええ!!! 黄色は駄目なの?」


「何で黄色が好きなの?」


あたしは聞いた。


「――の色だから」



よく聞こえなかった。



「え?」


聞き返した時、風が吹き――


イチルちゃんの前髪がふわりと揺れた。


片方ずつ違う、ガラス玉のように綺麗な瞳。



「"王者"の色だから。


私――王様になりたいの」



それが怖いくらいに冷たく細められ、思わずあたしは身震いをした。



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