シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
――――――――――――――――――――――――――――……


寒い。


寒い。


まだ"ぬくぬく"が足りない。


「――へっくしょん!!!」


あたしはくしゃみをして飛び起きた。


「お前、俺の顔に唾かけるなよ。まったくもう…。ああ、まだ寒いのか? じゃあ暖房入れてきてやるから。よいしょ、と」


隣から抜け出た橙色が、目の前の壁際でカチャリと何かを回して戻ってきた。


「もう少しであったかくなるからな。

やっぱ布団から抜け出たら寒ぃな」


「……」


「ほら、布団かけろって。まだ部屋暖まってないんだし」


「……」


「おい、芹霞?」



あたしは――


「何で――


同じベッドに堂々と潜り込んでくるんだ、変態ッッッ!!!」



煌の頬に、拳を入れた。



「~~ッッ!!!?

お前が寒い寒いって、そこに座ってた俺引き摺り込んだんだろ!!!?」


頬に手を押さえた煌が慮外とでも言いたげに、ベッドの脇にあるパイプ椅子を指差した。


「知らんわッッッ!!!

仮にそうだとして、何故止めないッッ!!! 何故真っ先に暖房を入れないッッ!!?」


「お前…恋する少年が抵抗なんてするわけねえじゃないか」


可哀相なモノ相手にするみたいに見てくるから、


「抵抗しろッッ!!! するだけの力はあるでしょうがッッ!!! それに此処何処よ、あんた何処にあたし連れ込んだのよ!!?」


馬乗りになって、煌の胸倉掴んでそう力めば、


「お前…誤解を招く言い方すんなって。ここは桜華の、朱貴がくれた鍵の"第2保健室"。皆は情報処理室で玲中心に情報拾ってるから、俺は此処でお前の見張りしてんだよ!!!」


「それが暖房つけない理由にはならんわッッ!!」


「……。頭…冷やしたかったんだよ、俺…」


何とも気弱な言葉と共に、精悍な顔が横に向けられた。


煌の様子がおかしいことに、あたしは訝った。


「久々にイロイロ考えていたら…よくないことばかりぐるぐる頭に回っててさ。暖房つけるの忘れて、椅子で考え込んでいたんだ」


「考えたって、何を…?」


あたしは手を離し、煌の横に正座をした。


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