シンデレラに玻璃の星冠をⅠ


「不倫!!? 何よそれ!!!」



「俺は――


お前の亭主だろ!!?」



"亭主"



「まだ言うかッッ!!! しつこいッッ!!!」



"亭主"



何故"亭主"?




「お前が言ったんじゃんか。


"如月芹霞"って…」



その…周りを意識したような得意げな顔に。



ぶちっ。



私の中で何かが切れた。



しかし。



私より早く、玲様が動き――


皿にあるおにぎりを鷲掴んで、煌の口に詰め込んだ。



ぐりぐりと手の平で押し込んだ。



容赦なく。



途端目を回す煌。



「煩い口だね…。


戯言ばかり言うんじゃないよ…」



鳶色の瞳は、冷酷な光を放ちながら細められていく。



煌の顔が、窒息感に真っ青になってきて。


手足をばたばた動かして。



そして玲様は。



長い足を振り上げ、煌の背中を思い切り蹴り上げ…



「ううっ、げほっげほっげほっ…


れ、玲…殺す気かよ…」



煌の口の詰め物を取り除いた。



ああ、いつもの玲様だ。



いつもよりも余裕ないみたいだけれど。



私は――嬉しくなった。

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