シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
珍しい、煌がびびっている。
真っ青通り越して真っ白だ。
あたしが大の苦手なホラー映画でさえ、どんなグロいものでも笑いながら見ていた男が、蟲…確かに気持ち悪いけれど、たかが蟲如きに、こんなになるなんて。
意外すぎた。
桜ちゃんは、険しい顔をして何か考えているようだった。
「しかし…際限ないね、これじゃあ。後から後から溢れてくるようだ、あの蛆は。蛆が湧くということは…やはりあの死体は」
「死んで…ねえよッッ!!!」
突如煌が叫んで。
驚いて皆で煌を見つめてしまった。
「…わ、悪ぃ。何か…動転しちまって…はは」
何だ、煌の様子が変だ。
怯んでいるだけではない。
また、奴は惑っているのだろうか。
緋狭姉の仇だ何だと、まだ悩み始めたのだろうか。
「ねえあれさ…変じゃないか?」
由香ちゃんが言った。
「あれの周りのもの…なんでカタチを無くして行くんだ!!?」
その意味が判らず、気持ち悪い白い蟲を再度見ると…
「食ってる?」
櫂が目を細めた。
「バクテリアみたいなものか? 触れるものを…食ってる。机も椅子も。食ってないのは…"あの女"だけだ」
「食べるのは、それだけじゃないね」
玲くんも目を細めた。
「……共食いだ。見てごらん?」
もぞもぞの度合いが大きくなり、やがて団子状の何かが出来て。
玲くんの力から逃れた蟲は、"生きる"為に他を取り入れて、
――大きくなる。