シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
「れ……んん!!!」


嫌だと顔を背けようとしたあたしに構わず、玲くんは両手であたしの後頭部を固定して、覆い被さるようにして口付けてくる。


無理矢理にこじ開けられた唇の間から、灼熱の舌が暴れる。


「んん、んんんん…!!!」


「好き……だよ、芹…霞。受け…入れて? 僕を…ねえ"僕"だけを…」


熱い吐息が言葉を紡ぐ。


あたしに何も言わせずに、また角度を変えて攻める唇。


ねっとりと下唇を吸い上げられ、口内に差込まれて蠢く舌が、内側から蹂躙する。


それは繊細というより…ただひたすら暴力的で。


我武者羅に貪られているような感覚だった。


「好きだ…芹霞…んんっ…好き…なんだ…」


あたしの気持ちなど一切お構いなしに、ただ自分の気持ちだけを痛い程ぶつけてくる玲くん。

卑猥な水音に羞恥心を覚える以上に、あたしはそこから逃れようと懸命で。


だけど、逃れきれない力に、益々息が上がり…浅い息をすることさえ困難になっていく。


「"僕"は…君の…あぁ…永遠…なんだ…。永遠…なんだ…よ? "僕"だけが…君の…運命の…んん…相手だから…ね…」


ねえ、玲くん。

本当にあたしが好きなの?


それはただ櫂に対する見せつけのように思えて仕方が無かった。


「も…う君は…"僕"のもの…だ。…はぁ……ん…。ね…え……"僕"を…求めて…?」


喘ぐような言葉は、熱っぽいのに…何処までも懇願のように聞こえるのに…
抵抗すら許さない、太い鎖のような威力があった。


「ねえ…"僕"を…んっ…愛……して…? 愛して…はっ…くれ…る、だろ…う…?」


まるで、力でねじ伏せられているようで。

無理矢理縛り付けられて。


息すら奪われて。


「君の……"王子様"…はっ…"僕"だ。は…ぁ…"僕"…だけな…んだ」


こんなの――

玲くんじゃない。


玲くんは…違う!!!


それは本能的な拒絶感。


あたしの好きな玲くんは、違う。


返して。

ねえ、あたしの玲くんを返して。


哀しくて苦しくて…涙が流れた。



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