シンデレラに玻璃の星冠をⅠ


これは…好きと言わないよ。

ただの…暴力だよ。


ねえ玲くん…。


本当の"心"は何処?


玲くん…帰ってきてよ…。



そんな時、唇がすっと離れて。


ようやく…呼吸が出来るようになった。


荒い呼吸を繰り返して、涙で滲んだ前方を見つめれば……櫂が居た。


深い翳りに覆われた顔で、今にも泣き崩れてしまいそうな弱さを見せながら、玲くんの手を後方で捻っていたんだ。


「……何だよ、櫂。邪魔するなよ。まさか芹霞まで、また"僕"から奪おうなんて考えていないだろうな?」


しかし櫂は何も答えなかった。


ただただ憂いある切れ長の目を向けているだけで。


「何? また…"僕"を殺したいの、お前…」


玲くんの声が氷のように冷たくなった。


「何度"僕"を殺して打ち捨てれば気がすむんだ? お前の中には、良心とか罪悪感というものはないの?」


しかし櫂はやはり黙したまま、ただ視線を玲くんに向けていて。


まるでそれは――

慈愛深い聖母のようなもので。


一気に鳶色の瞳が細められた。


「そんな――

哀れんだような顔をするなッッ!!!


"僕"をどこまで馬鹿にすれば気が済むんだ!!!」


玲くんが叫んだ。


憎悪を迸(ほとばし)らせて。
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