シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 

「え?」


玲くんが驚いた顔で櫂に振り向いて。



「あの女に感じた嫌悪感も罪悪感も、二度と感じるな。

…芹霞では出来んショック療法だろう?」



にやりと、そう笑った櫂は――


「よく、戻ってきた」


ふわりと柔らかく微笑んだんだ。


今までの嫌悪感を、見事に払拭させて。


いつも通りの、"信頼"と"愛情"がそこにはあった。



――途端。


玲くんは泣きそうな顔をしながら、


「ただいま」


やはり同じように、ふわりと微笑した。


櫂の心に、彼は応えた。


ああきっと。


2人には、多くの言葉など必要ないんだと思った。


血の成せる業かどうかは判らないけれど、理屈ではない処で…2人は通じ合っている。



それでも――

どうしても形にしたい言葉というものはあるみたいで、



「櫂…僕は……」


玲くんは気にしているんだ。


櫂に向けた"暴言"。


玲くんが震える声を出せば、


「玲、すまなかった」


言い出す前に、櫂は頭を下げた。


「頭を上げれよ、櫂!!! 僕……」


「俺は、正直揺らいだ。

それだけのことをしてきた。


だけど――

それ以上に、今のお前を信じたい。


だから。


俺を信じろ」



それは櫂特有の…不遜にも響く、端的すぎる言葉だったけれど。


それ以上…

どんな言葉があるのか。


伝えたい心があるならば、飾るものなど必要ないんだ。


玲くんは続けようとしていた言葉を呑み込み、



「勿論、喜んで」


微笑した。


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