先輩のボタン【卒業記念ショートストーリー】
もちろん、宝物だよ。
あの時、先輩からもらった赤いはちまき。
もらったわけではないけれど、
このはちまきを私が大事に持っていることを
先輩は知ってくれているような気がした。
私の『好き』は
先輩に届いてる?
先輩は彼女がいる。
先輩を好きな人はたくさんいる。
先輩に憧れる下級生もたくさんいる。
でも、赤いはちまきを持ってるのは
私だけ…
あの体育祭の日から、私と先輩は
1センチくらい近付いたんだ。
誰にも気付かれないくらい少しの距離だけど、
確かに近付いたんだ。
それは、私にしかわからない変化だけれど…
ね、先輩。
廊下ですれ違った先輩が、振り向いてくれた。
ニコ…って。