繋いだ手
換気の為に、ちょこっと開けたサイドガラスの隙間から吹く風が、


頬に触れた一瞬、
さっきのアイツの声が、また頭をよぎった。


その瞬間、愛とか恋とかに全く無関係な、あたしと善の距離が、

その距離と歳の差が、


心地いいと思わせる反面、
善は、常に傍にいてくれる人ではないし、


これは、一人の、自分自身の戦いだということを思いしらされる。


ちょっと寂しい…と思った。


善には、どこから話したらいいんだろう。

どこまで話したらいいんだろう…

今の心地いいは、無くしたくない。


¨その時¨が来たら!でいいや。

自分の中のギアを切り替える。


とりあえず、今を全身で感じないと、もったいないや!


そんな一人ごとを内に秘めていたら、

キャミソールの下から『キュルルゥ〜』って鳴って、


同時に隣からも、『ぐぅ〜』が聞こえてきた。



さっきのデンワで、
林檎の声を、デッキに閉じ込めたままだった。


ボリュームをあげる前に腹ペコ協奏曲が、赤信号で、キレイにはもった。


「あ〜腹へったね。」


その声がお揃いの笑顔に変わった。
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